ウチには大型犬が4匹いる。
それだけではない。大型の熱帯魚(アロワナや古代魚など)の入った水槽が2つ、中型水槽1つ、小型水槽1つ、トカゲや蛇のケージも多く、大きくなるものばかりなのでその存在感も半端ではないのである。なぜ、こんなことになっているのか。ひとえに好き勝手に生きて好き勝手に行動している男のせいである。
人の趣味は多様であるが人を巻き込んではいけない。共に生活する私はただ振り回される日々である。
しかし現実に人以外の生き物がたくさんいて特殊な環境である。面白いことだと捉えてその暮らしぶりを紹介しようと思う。
まず、犬たちの話から始めよう。
サンポ(ラブラドールレトリバー5歳)
唯一のウチのお坊ちゃま。幼いころから愛を一身に受けて育ったので頭がよく人の言葉をよく理解する。
性格は、我が強くえばっているが甘ったれでもある。外見は可愛いというより凛々しい。闘犬のようなオーラを放つ。体形は筋肉質、マッチョである。
ある日を境に 急に仲間が増えたので戸惑っていたが今はすっかり落ち着いた。
テールとは良きライバル。初めてのバトルでサンポは負けた。すぐに2階の一番奥まで駆け上がって丸まり夜遅くまで動かなかった。お坊ちゃん育ちの彼には衝撃だったようだ。野山をさまよい過酷な状況にあった
野生児とは勝負にならなかったのである。その後、サンポは何度も勝負を挑み負け続けた。でもあきらめずに何度も何度も挑みかかった。いまでは毎朝テールにけんかを吹っ掛けて、家の中や庭で唸りあい、ぶつかり合い対決したり追い回している。どちらもエネルギーを持て余しているからいい遊び相手なのだろう。
サンポは散歩のときネコやキツネを見つけると突進していくので散歩のときは引っ張られて大変だ。4匹の中で一番散歩下手、問題児である。そうかと思うときちんとお座りして皆を待つところもあって人から褒められることも多い。好きな人は顔をなめて愛情を表現する。興味のない人は名前を呼ばれても無視する愛想のない犬である。
アン(ゴールデンレトリバー推定12歳)
アンとの出会いは2020年11月。毎朝サンポと散歩をする道中に会う人が朝から吠える犬がいて困っているんだという話を聞いた。ちょっと覗いてみると可愛いゴールデンだ。可愛い顔をしてシッポをふるので撫でてみた。
喜ぶ。問題なし。一週間毎朝通ってしばし遊んで過ごした。そのうち家の方と話をする機会があって聞いてみるとアンを可愛がっていたご主人が病気で亡くなって、奥様も腱鞘炎でお散歩に連れていけないとのこと。
許可を得て毎朝一緒に散歩することになり、街の中、千曲川の河川敷を歩いてみた。少々きついかと思ったがなかなかの健脚で喜んでいるようすだ。一週間後に奥さんに「ウチで飼いましょうか?」と言ってみると「そのほうが幸せかもしれない。」と言ってくれた。そしてお散歩大好きアンは喜んで我が家の子になったのでした。
彼女は顔が優しいし大人しいので塾の子たちに大人気。お散歩も上手。ただ、食いしん坊で食べたいものがあると要求吠えは激しい。朝ごはんを待つときのうるささは一番だ。淳さんが大好きで片時も離れない。
ウール(ラブラドールレトリバー推定 9歳)
出会いはアンが来てからだ。塾に来ている子が「ウチの近くにも吠えて困っている犬がいる。散歩も言ってないし可哀そうだ。」 その言葉に淳さんが動いた。うちはこれ以上飼えないことを十分わかっていて様子を見にいった。
経緯はいろいろあったようだが毎朝、淳さんが散歩させることになった。動くことが大好きな子だからお散歩ナシはつらかったはず。淳さんが散歩するようになったのが2020年11月末。2021年6月テールの後からウチの子になった。朝、昼、夜の散歩、庭では子供たちとキャッチボールと疲れる様子は全くない。昼の河川敷の散歩は千曲川に飛び込んで泳いだり走ったりとかなりハードでサバイバルだがなんなくこなす。
あまりの活動量の多さなのでたっぷりご飯を食べさせ続けようやく一人前の体系になった。
初めは貧相な犬だったが、今は若いお姉さんたちに「カワイイー!」といわれる美人である。大人しそうに見えるが性格的にはしつこいタイプである。彼女も淳さん命。片時も離れない。人が来ると吠えるのが欠点。番犬代わりに飼われていた名残りだ。じっとしていないので写真撮りの難しい子である。
テール(イングリッシュポインター 推定5歳)
この子は衝撃だった。2021年5月30日昼、ふと庭を見ると・・・猟犬!
嫌な予感がした。千曲川、冠着橋の下にいてうろうろしていたらしい。ガリガリにやせてあばら骨、おしりの骨が2つ飛び出していた。初めてご飯を上げたときの雄叫び、大きな低音で「ウォォオオオ」と吠えてガツガツ食べる姿は怖かった。嬉しい時長いシッポをグルグルさせるのでテールと命名。
今でこそ穏やかな家庭犬になったが度重なる脱走、激しい食欲、ずば抜けた運動能力などで私たちの度肝を抜き、苦しめてきた。性格は人懐こくて可愛い。花火の音や雷にビビって飛び跳ねて逃げる姿は面白い。彼のエピソードはあとで詳しくお話しする。
家の中で大型犬を4匹も飼うことになったのは色々事情があったのだが、散歩も食事も排せつも、吠え声も・・・・4匹そろうと半端な騒ぎではない。初めのころは私のキャパを超えていた。
毎日朝、起きるとすぐ犬の散歩。
千曲川沿いの田畑の中の道をおよそ1時間の行程を歩く。
昼は淳さんが千曲川の河川敷に連れていく。
この散歩は川や湿地を歩き、どろどろになることもあるし、泳ぐこともあるしかなりサバイバルである。平和橋や冠着橋の上や川沿いのサイクリングロードから見ている人も多い。
ジュンジュラパーク
さて、わんこたち以外にもウチには様々な生きものがいる。古いところから話すと、まず熱帯魚。小さいのを買って大きく育てるのが楽しいらしい。
アジアアロワナ3匹、シルバー、ブラックアロワナ、ダトニオ、スポッテトガー、ダルタニアンとエンドリケリー3銃士、多くは古代魚なのでみんな15年~20年と長生きである。
用水路で助けた日本ナマズ、リクガメ、水亀。トカゲもいる。フトアゴヒゲトカゲ、イエローヘッドモニター2匹。蛇もいる。 ポールパイソンなど高価なバックの皮にできそうなのが数匹?いる。
いずれにしても、小さく買って大きく育てるわけで、気が付くと大きな怪獣みたいなのがいっぱいいてぎょっとする。
これらはケージに入っているのでさほど私に影響はないが、ヘビが脱走したり、ワーム、こおろぎなどの生餌、冷凍マウスや冷凍うずらなど気持ちの良いものではない。私はフトアゴヒゲトカゲの㋒のにおいがとっても苦痛。
山のようなエピソードがあります。
第1話 テール登場
ある日、何気なく庭を見ると知らない犬がいる。猟犬だ。
今、サンポとアン、ウールとで犬が3匹いる。前も3匹レトリバーを飼っていたから私の許容範囲内だった。しかし、4匹目は!無理!絶対無理だ。
なぜこの犬がウチの庭にいるのか。私は覚悟をもって淳さんに聞いた。「なんで⁈」
彼が言うには、千曲川でサンポたち3匹が泳いで遊んでいると、テールが寄ってきた。
周りの釣り人に聞いても誰の犬でもなかった。仕方なしにアンのリードをつないで4匹で帰ってきたとのことだった。
ガリガリにやせていてあばら骨が見える。すぐに保健所、警察に連絡したが迷い犬の届け出はないとのこと。
その日はウチで過ごすことになった。
驚いたのは食事の時、お皿に乗ったレバーと鶏ガラ等、山盛りのご飯に大興奮!
ウォーホーホホホーという雄叫びに私たち、サンポ、アン、つまり全員が震えた。
床に置いたご飯をガツガツ食べる姿に恐怖を感じた。食べている最中に近寄ったら危険、嚙みつかれそうだ。
後日、それは本当のことになった。
近くを通っただけでサンポは耳を少しかじられ、アンは鼻の近くを噛まれ顔に小さな引っかき傷ができてしまった。
テールはどのくらい放浪していたのか、おしりの腰骨がふた山、鹿島槍のピークのようにとんがっている。
初めのうちは飼ってくれる人を探したが途中であきらめた。とても普通の家庭では飼えそうにない・・
人懐こくて可愛いところもあるが、食事時は近寄れない。
盗られたりしないと安心するまでには時間がかかった。
床にエサを置くと自分の長い耳を噛んで血が出る。
その耳をブルンブルンブルン・・部屋中に血が飛び散るからたまらない。
壁もカーテンも血しぶきだらけ。近くの炊飯器も、すべてだ。なすすべなし。
しばらく経って落ち着いたころから両手で食器を持って高い位置で食べさせるようにした。
血しぶきはようやく収まった。
エサに関してテールは凶暴だ。サンポ達よりハングリーなテールの登場で平和な日常は失われた。
みんなの心に不安が広がった。
第2話 テールの脱走!
ハングリーで凶暴、その上、隙があれば家から逃亡する。
玄関から飛び出し家の前に広がる畑を美しく走り去っていく。
走る姿はほれぼれするほど美しい。
知っている人が彼を見つけると捕まえようとする。が決して捕まらない。追いかければ逃げる。
走りで彼に勝る人間はいないと思う。
彼を捕獲し連れてきてくれた人はエサで寄せてリードをつけたそうだ。
でもその日は2度の逃走した。我が家の1m高さのブロック塀を飛び越えて。
外にいる彼を見た私の驚きを想像してみてほしい。ホッと一息してコーヒーを飲むとことだったのだ。
一瞬にして顔面蒼白になった。
イングリッシュポインターの運動能力では1mくらいは平気で飛び越える。
レトリバーとは比べ物にならない。後日、大工さんに頼んで30cmのネットを付け加えた。
それ以降ブロック塀から逃走することはなくなった。
真冬の夜、飛び出して朝まで帰らなかったことがある。
一晩中うとうとしながら眠らずに待っていた。明け方まで帰らず、7時過ぎに飄々(ひょうひょう)と現れた。
彼は朝のサンポには連れて行かなかった。
4匹そろって朝ご飯を食べるとずっと炬燵にくるまって寝ていた。相当疲れたと思われる。
この子は寒がりで炬燵に入るのが大好きなのだ。
第3話 テールの大冒険①
ある寒い冬の日の9時半、生徒がドアを開けた!「アッ」という間に外に飛び出した。
近くの小船山公園にいた生徒のお母さんが、「テールを皆で捕まえようとしたけれど捕まりませんでした。すみませーん!」と連絡をくれた。
千曲駅の近くに住む生徒のお母さんからも「テールがいました。どう見てもあれは先生のところのテールです。
東山に走って行っちゃいました。」という連絡。
4時を過ぎても戻らないので、とうとう私は警察に連絡した。
警察の方に状況を説明していると、玄関のベルが鳴った。
ドアを開くと、知り合いのK先生と先生のお友達とテールがいた。
テールは軽い足取りで悠然と部屋に入ってきた。警察の人に帰ってきた旨を伝え電話を切った。
先生方から経緯を聞くと、テールはパチンコアサヒの駐車場にいたそうだ。
K先生たちがテールに気づくと、テールは先頭に立って先生たちを我が家まで案内してきてくれたそうだ。
散々遊んで帰る気になったところで知り合いに会ったということか?
とにかく安堵し、お礼を言っていると、電話のベルが鳴った・・・警察からだった。
「内川の人からダルメシアンみたいな犬が走っていた!という通報があったし、国道18号線も少し渋滞したそうです。気を付けてください!」
と言われてしまった。
テールの軌跡を辿ってみた。
家から小船山公園までは近いし、朝の散歩コースだからいつものこととも考えられるが、
交通量の多い千曲線を越え、国道18号を超え、しなの鉄道の踏切を超え東山を駆け再び渡り返し
パチンコ屋の駐車場でふらついていたとは恐れ入った。
こんなこと、イングリッシュポインターなら容易なんだろう。
でも人様に迷惑をかけたし、車に轢かれることだってある。
私だって一日中心配で心が休まらなかった。命が5年くらい縮んだと思う。
第4話 テールの大冒険②
2024年3月4日テールがまた行方不明になっている。
大池自然の家は2月のこの時期、人がいない。リードを外して好きに走らせる。
サンポやアン、ウールはじゅん先生と一緒につかず離れず歩いているが、テールは違う。
リードを取ると広場を3週くらい走って山の中へ消えて行く。
途中、山を登っていると後ろからドドド・・・と音がしたかと思うと突然姿を現し疾風のように走り去っていくのだ。
ある時は鹿の足をくわえて来た。どこかで死んだ鹿を見つけたのだろう。
最近は鹿のしゃれこうべをくわえて戻ってきて車に乗り込んだそうだ。
野生の血が騒ぐのか、時々ぎょっとさせられる。
初めのころはテールだけ、どこに行くかわからないので5mのロングリードで散歩させた。
3匹のレトリバーは自由に走らせているのにかわいそうだが仕方なかった。
半年くらいたって呼び戻しができるようになったので河原で放せるようになった。
最初のころ水が怖くて泳げなかったが細身のシルエット、長い手足。今では一番泳ぎが上手くなった。
テールだけで対岸まで泳ぎきり、そのまま土手を超えて行方不明になってしまったことがある。
じゅん先生が何度も叫んだが戻らずじまい。
警察から連絡をもらって引き取りに行った。対岸で猫のえさの匂いに吸い寄せられ食べに行ったようだ。
そこのお宅の方と近所のご婦人たちに可愛がられていた。
テール君のせいでウチは何度も菓子折りをもってお礼に行った。
そうこうしているうちに大池の森林組合の方がテールを見つけてくれた。
その日、じゅん先生は大池を4往復した。
第5話 マムシに注意
かれこれ20年以上千曲川の河川敷をホームグラウンドにしてきているがマムシに嚙まれたのはテールが初めてだ。
じゅん先生と4匹の犬たちが歩いていると、突然「ウォー、ウォー、ウォー、ウォー」と天地がひっくり返りそうなハスキーボイスの叫び!
悲痛な雄叫びを上げているテールを見てほかの子たちも大騒ぎ。
テールを連れて動物病院に急いだが昼休み中。家で様子を見て夕方病院に行った。
ものすごく腫れて次に少し血が出てきた。もしかしたら蛇に噛まれたかもしれないと思い始めて、病院に行くとやはりそうだった。
口輪をはめて看護師2人が動かないようにしてお医者様が診察。・・・マムシだった。
スタイリッシュな脚は見事に腫れている。
私は恐る恐る聞いてみた「散歩が好きなんですが、無理ですか?」
お医者様は「様子を見て、、、明日は無理じゃないかな」との返事。薬をもらって帰った。
次の日、テールの脚の腫れは引いていた・・・そして散歩に行ったのだ!
昼は用心して私が川に生かせないようにロングリードをして連れて行った。
不満げに歩いていたテールだが、千曲川で遊ぶ3匹の声が聞こえると我慢できなくなってロングリードごと走りさっていった。
あわれな私は川の支流にドボンと転がり水浸しになってしまった。たった一日で回復するなんてテールはマムシに強い体質だ。
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